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僕らの電脳秘密基地。

cpplover.blogspot.jp

 

そして、感動した。これだ。久しく忘れていたインターネットがここにある。何ということだ。
そこにあったのは、黎明期の怪しげな雰囲気を持つインターネットだった。今から20年ほど前の2chIRCの雰囲気だ。インターネットよ、私は帰ってきた。 

 

Mastodon(マストドン)が話題になってから数日後にpawooに登録した。Twitterと平行して使っているが、確かに"インターネットよ、僕は帰ってきたぞ。"という感覚がある。


黎明期の怪しげなインターネット。それは90年代後半~00年代のインターネットであり、限られた人しかアクセスしない空間だった。ネット人口は少なかったが、実はそれが良かった。ネットに繋ぐ時点である程度のリテラシーがあり、「新しいものへの情報感度が高い、話の分かる」人しか存在しなかったからだ。


あの頃の僕たちは、ピーヒョロロとダイヤルアップでインターネットに接続し、怪しげな個人サイトやその掲示板で情報を漁り、そしてまたリンク集を辿って別のサイトを巡回した(当時は検索エンジンも"人が手で登録する"方式だったのであまり使えなかった)。それはまるで宝探しのようだった。


そこで交換されていた情報といえば、自殺志願者の叫びや犯罪のもみ消し方(2ch初期のメインの話題はこれだった)、本当かどうかも分からない凶悪犯罪や少年犯罪の裏事情などといったアングラ情報や、歴史認識や外交といった政治話、誰かが海外から持ってきたネタ画像やテキストサイトのネタ記事、違法コピーやPC自作、便利なフリーソフトや次世代のITなどの技術ネタ...共通するのは「リアルでは話せない、地上波ではまず流れない情報」である。


マジョリティである地上波テレビに対抗するアングラネット文化、という構図が確実にあった。


僕たちは日々ドキドキしながら「仲間」が待つ電脳秘密基地に接続し、ぬるぽと言ったらガッされ、侍の絵がトップになっているテキストサイトの記事で笑い、そこで取り上げられた中華ロボット同人Flashゲーム(異様にクオリティが高かった)にハマり、対立する政治思想の相手と不毛な論戦を繰り広げた...当時は「この腐れ左翼どもが!!」などと思っていたが、今となっては「怪しいきらめき」を彩った仲間だったのだろう。大衆化した今では徹夜で不毛な論戦ができるネットユーザーなど、100人に1人、いや1000人に1人レベルか。


ネットが大衆化するにつれ、リアルの話をそのままインターネットに持ち込む人達が増え、僕は「面白い世界」を求めて移動することになった。それはブログでありmixiでありtwitterでありfacebookだった。


動画に検閲をかけないといけなくなったfacebookは、もはや「面白い人達だけの空間」ではあるまい。"検閲とかしてたらテレビと一緒だろ、アブない情報だからネットの意味がある"という意見の持ち主は少数派だろう。


そして今、マストドンこそが僕が求めるフロンティアなのかもしれない。インターネットよ、僕は帰ってきたぞ。

 

 

教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書

教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書

 

 

女装と攻殻と。- Ghost In The Shell -

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新宿にGHOST IN THE SHELL(4DX)を見に行ってきた。


劇場版アニメ公開から20年以上を経てついに実写化。年月を重ねてここまで認知が高まったか、と実写化発表時点で感無量だったが、作品もなかなかの仕上がり。元々難解な原作をブレイクダウンしつつ、4DXで近未来都市を飛び回るという体験的快楽をプラスしていたのはさすが。


実写化するならこれくらい分かりやすくて良い。


アニメ版とは違うシナリオになっているが、アニメを忠実に再現したシーンがあったり、他の映画のオマージュが入っていて


・都市の描写で巨大なホログラムとか映像看板が大量に出てくる → ブレードランナー風味を入れてきましたね

・マンション名がアヴァロン → 押井守監督の実写作品からかなー
・マンションの一室で話し出す桃井かおり → あ、これマトリックスのオラクルですね

 

など、僕よりサイバーパンクに詳しい人ならもっと色々見つけられると思う。

 

この映画を新宿で見たのにも意味があり、高層ビル群が立ち並びつつその下に横丁が並ぶ様子がブレードランナーのモデルになったと言われているのである(「4つくれ」「2つで十分ですよ!」のシーンはファンの間の鉄板ネタである)。


さて、僕が女装を始めたのには攻殻機動隊の影響もある。


攻殻機動隊が属する「サイバーパンク」というジャンルの特徴として、テクノロジーによるアイデンティティの危機がある。


サイバーパンクの世界では、体は自由に変えられるし(これを義体と呼ぶ)、もっと言えば脳をネットに繋ぎ、肉体から解放された存在になることができる。その時人間のアイデンティティはどのようにして保たれるのか、という問題だ。


その世界では、義体をまるでアイコンを変えるように取り替えて別の人物として振る舞うことができる。


この「自由に見た目を変えて別の人間として振る舞う」ことができるというコンセプトは、自らの肉体にコンプレックスを抱きがちな現代人にとっては夢の世界である。


何しろ社会が取り除いてきた「生まれつきの属性によって差別されること」(性差別、部落差別etc...)の最後の対象であり、我々に呪いのようにまとわりつく「見た目による差別」から解放されるのだ。


そして、「見た目をコントロールして別の人間になる」という行為を、今の技術によって実現する方法の一つが女装なのである(このあたりの話については以前も書いた)。

 

このため、女装を始める前は、「見た目を変えることによって身体性から解放されるのを楽しむのか」と思っていた...が、実際に女装を初めて分かったのは、女装をする目的はむしろその逆で、「自分の身体性 = アイデンティティに価値を見出す」ためなのである。


生後の努力によってほとんどのことが得られる、という前提を共有した社会に生きていると、我々は何かを努力して身につけた自分に交換可能性を見出してしまう。


つまり、「自分ではない別の人が同じようなトレーニングを行えば、結局似たようなことができてしまう」呪いにかかる。


そして、「努力しても得られない」ものに価値を見出す。


これはガンダムにおけるニュータイプと強化人間の関係に近い。


ここでは簡単に、
ニュータイプ:先天的にモビルスーツを操縦できる新人類
強化人間:後天的な投薬や心理操作によりモビルスーツを操縦できるようになった人間

 

としよう。自己肯定感が満たされるのは、ニュータイプのほうではないだろうか?


これは地頭信仰にも通じるものがある。IQテストで高得点を取ったとして、何も準備せずに何故か点を取れる天才...そういうものに人間は惹かれる。


エヴァのシンジ(一方、努力でパイロットになったアスカは壊れていく)やマトリックスのネオ = The Oneなど、運命付けられてしまった主人公は様々な作品に登場する。


「何故かは分からないけど、選ばれてしまった」感覚は、強烈な快楽であり、麻薬のようなものだ。


自分と他人を分かつもの...交換できない個性としての身体を再確認するのが女装という行為なのである。


さて、今週末も出かけよう。夜の新宿は広大である。

 

 

新宿思い出横丁

単焦点レンズが届いたので思い出横丁を撮影。

Camera: EOS Kiss X8i

Lens: CANNON EF-S24mm F2.8 STM

 

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Going Clear: 戦慄のサイエントロジー。

"Going Clear"という映画がたまたまAmazonで配信されていたので購入した。

 

 

この映画は大ヒットしたというわけではないが、宗教マニアにとっては割と有名な映画である。というのも、これはサイエントロジーに関するドキュメンタリーだからである。

 

サイエントロジー

 

映画通の人ならトム・クルーズジョン・トラボルタが所属している新宗教として、またサウスパークのファンならあのアニメ特有のやり方で取り上げてしまったためにシェフ役のアイザック・ヘイズが降板してしまった(彼はサイエントロジーの信者だった)原因として、あるいはネットの騒動に詳しい人なら、アノニマスを一躍有名にした"Operation Chanology"の敵対相手として記憶されていることだろう。

 

とはいえこの宗教について日本で取り上げられることはあまりなく、国内の新宗教に比べればほとんど知られていないのではないだろうか。新宗教マニアでも、何となくラエリアン・ムーブメントとごっちゃになる感覚がある程度の人が多いかもしれない。ところがこれが、なかなか興味深い教団なのである。

 

サイエントロジーの特徴は、細分化された段階を上っていく"レベル上げ"(ブリッジと呼ばれる)と、最高教義の秘匿にある。サイエントロジーには創始者であるL・ロン・ハバードの著作や講演を元にした教材が準備されており、それを学習していくことで教団内での位を高められるという寸法である。そしてレベルが上がる際にはお布施を払うという、ゲーミフィケーションも取り入れたなかなかうまい仕組みなのだ。高いレベルまで上がると人の心を読めたり物を動かせたりという超能力が使えるともされる...のだがそのレベルに達していた元信者の話を聞く限りは当然そんなことはない。

 

そして、ここからがこの教団の中核である。ブリッジの中で最高レベルに達すると、厳重に秘匿されている"隠し教義"を教えてもらえるという。その内容はレベルが低い人間が触れると発狂してしまうため、厳重に管理されているのだが、最高レベルに達していた複数の脱会者の証言を併せるに、それは次のような内容だ。

 

7500万年前、人類は1950年代のアメリカとほぼ同じ生活を歩んでいた...その世界での最大の社会問題は、人口過剰であった。

 

これを解決するため、銀河連合を統べる"ジヌー"は余分な人々を凍結させ、旅客機に載せて監獄惑星に運んだ。

 

そして人々を監獄惑星の火山に放り込んだ上、水爆を落として殺してしまった。実はこの監獄惑星というのは地球のことなのである。
死んだ人々の魂(セイタンと呼ばれる)は集められ、3D映画で色々な宗教の教えを刷り込まれた。

 

その後セイタンは野に放たれ、当時暮らしていた地球人に入り込んだ。

そして今、我々の体にもジヌーの魂が入っており、これが不安や神経症の原因になっている。

 

これを取り除くために、オーディティング(サイエントロジーで行われるカウンセリングのようなもの)をやらなければならないのだ。


という話である。

 

いきなり聞いた人なら「???」となるだろう。実際、大金をつぎ込みながらこの話を聞かされた元信者もあ然としたらしく、「奴らは一体何を言っているんだ!?頭がイカれてるかのテストかと思った。」と述べている。

 

ちなみにこの創生物語?は、"隠し教義"と言われながらネットに流出していたり、サウスパークで1分アニメにされちゃったりしているので、"隠し教義"とは既に言えなくなっている節がある。またWikipediaにはジヌーの項目があり、なかなか充実している。

 

これだけなら変わった教義の教団というだけで終わりだが、この映画ではこの後、教団の異常な行動に迫っていく。

 

トム・クルーズニコール・キッドマンが離婚する原因となった別れさせ作戦(ニコール・キッドマン父親はオーストラリアの心理学者であり、サイエントロジーに対して批判的だった)や、危険分子と判断した信者(何しろカウンセリングのメモが全部残ってるので個人的な相談事も全て教団に握られるのだ)を虐待する施設の存在、そしてトム・クルーズの広告塔としての顔など。

 

次第に明らかにされる教団の裏の顔を見るにつけ、戦慄する映画となっている。

 

さて、僕にとって興味深いのはその教義である。"銀河連合"、"宇宙人"などが出て来るあたりは何度か取り上げた神智学やそれを引き継いだUFOオカルトに近いところがあり、"Neo-Theosophy(ネオ神智学)"の項目に挙げられていたりするが、どうも直接的な繋がりが出て来ない。

 

このあたりの繋がりに関しては今後も調べるとするが、神智学をルーツとするUFOカルトは複数存在する。

 

その中で恐らく最も有名なのは"ヘブンズゲート"だろう。

 

「天の王国」の宇宙人が地球を常に見守っており、霊的に成長した個人は「天の王国」に帰還できる。
我々はそのために霊的成長を目指さなければならない、というのが大枠の教義だが、この教団が有名なのはその終末による。

 

1996年11月、ヘール・ボップ彗星の写真に写った謎の物体から、「天の王国から迎えがきた」と判断した彼らは、魂をUFOに載せるために集団自殺を試みた。39人の信者は遺体で発見され、その様子はカルトの集団自殺として報道された。

 

この教団を設立したのはアップルホワイトとネトルスという2人の人物だが、ネトルスは元神智学協会の会員だった。

 

神智学とカルト教団との関係については今後も調べていきたい。

 

僕はカルト教団にも興味を持っているが、一方で極左集団にも関心がある。

というのも、彼らをそうさせる理由が気になるからである。

 

人間が過激な行動に出るからには、それなりに理由がある。

 

一見不思議な行動や習慣も、その背後には人々の間で共有されている物語、教義、ロジックなどがあるはずなのだ。

 

僕はその物語というものに強く惹かれるのだ。勿論その原体験はオウム真理教である。

 

 

中核VS革マル(上) (講談社文庫)

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「カルト宗教」取材したらこうだった (宝島社新書)

「カルト宗教」取材したらこうだった (宝島社新書)

 
カルト村で生まれました。 (文春e-book)

カルト村で生まれました。 (文春e-book)

 
さよなら、カルト村。 思春期から村を出るまで

さよなら、カルト村。 思春期から村を出るまで

 

 

3.20 オウム真理教とその根源、そして社会に染み出す宗教のエッセンス

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今朝は3月20日ということで霞ヶ関駅に行ってきたが、献花台の前に多くのメディア関係者が集まっていた。

今日は地下鉄サリン事件から22年の日である。無論3.11も印象的な日であるが、僕にとっては3.20も人生に大きな影響を与えている。

 

22年前のこの日、霞ヶ関駅に通じる3路線(丸ノ内線日比谷線、千代田線)に猛毒のサリンが撒かれた。

 

撒いたのは新宗教団体オウム真理教の信者であり、幹部には理工系の高学歴信者が名を連ねていた。

 

僕はまだ小学生だったが、当時の状況をありありと思い出すことができる。

 

地下鉄サリン事件の後はメディアがオウム一色に染まり、朝から晩まで教団の施設(サティアン)や風変わりな修行(水の中で息を止める、土に生き埋めになるなど)、教祖の空中浮遊などが報道された。


それは時に面白おかしく取り上げられ、教団幹部がワイドショーでコメンテーターと激論を繰り広げるなど、とにかく彼らはメディア映えした。

 

そしてまた、オウム以外の部分でも世紀末を思わせる文化が流行した世相だった。

 

・オカルトブーム
→ 当時はまだオカルトブームが残っており、テレビでは怪しげな超能力者や霊能力者が出演したり、疑似科学を取り上げる番組が定期的に放送されていた。
今では超能力はほとんどトリック、UFO映像は素人が作ったネタ、疑似科学には再現性が見られないことが露呈しているものの、当時はそれなりに真実味があった(これは主に演出のせいである)。

学校の怪談ブーム
→ 小中学校では学校の怪談が流行し、「トイレの花子さん」「テケテケ」といった噂話に子供たちは熱狂した。
まさに95年には映画「学校の怪談」が公開されて大ヒットした

ノストラダムスの大予言
→ 「1999年に世界が終わる」という予言が世間を賑わせ、信じるかどうかは別として多くの人の心に留まっていた。

 

これらをまとめると、テレビでは怪しげなオカルト番組が放送され、学校では子供たちが怪談話に心ときめかせ、そして多くの人が世紀末に訪れる世界の終わりに思いを馳せていた世の中だった。

 

多分にもれず僕もオカルト少年として育ち、学校からの帰り道、リコーダーで尊師マーチを吹いて怒られたり(音楽の授業を真面目に受けたのはこのためだったと断言できる)、プールで息を止めて遊んでいたりした(今思うとよく死ななかったものだ)が、ノストラダムスの大予言をきっかけにオカルトネタばらし派に転向したのは何度か書いた通りである。

 

このようにオウム真理教にもオカルトにも多大なる興味を持っていた僕だが、オウム真理教とオカルトがどう結びつくのかについては長いこと明確に説明できなかった。
これはハマったのが子供の頃というのもあるが、オウム真理教というものが一体どこに根源を持ち、その根源が他のどの事象に関係しているかについて分かりやすく書かれた本に出会わなかったことも大きい。これについて話せるようになったのは、読書会も行った、宗教学者大田俊寛氏の著書を読んでからである。

 

オウム真理教が若者を惹きつけたのは、「特殊な修行を行えば、常識を越えた超能力を身につけることができる」という考え方を広めていたためであり、瞑想(や時には飲み物にこっそり混ぜられたLSD)を通じて神秘体験を得た若者が心酔していった(これも今ではある種の状況下では多くの人に起こる状態であることが分かっている)。
この「ヨガや瞑想によって超能力を身につける」という思想は阿含宗という新宗教を経てニューエイジ、そして神智学へと辿り着く。この思想がUFOやマヤ暦などのオカルト、高次元霊とのチャネリングといったスピリチュアルの元ネタになっていることは以前にも書いた。

 

90年代とは状況が大きく変わり、オカルトは下火となり(今はネットですぐにインチキがばれる)、新宗教アレルギーも根深いために「これはある宗教の...」と言われるだけで受け入れられなくなる世の中であるが、今もなおそれらを大幅に薄めた形で(特に「宗教ではない」という触れ込みで)エッセンスが世の中に染み出している。それはロハスでありスピリチュアルであり自己啓発であり代替医療であり、マルチ商法であり疑似科学である。例えば近所に「EM菌で服がキレイに!」などと謳っているクリーニング店があるのだが、彼らは、あるいは3.11以降EM菌を持て囃した人々は、それがもともと世界救世教という新宗教と深いつながりを持っていることを知っているのだろうか。恐らく知らないだろうし、知っていても表に出すことはまずない。こうしてそのルーツが知られることのないまま要素だけが世に広まってしまう。僕はここに大きな欺瞞を感じずにはいられないのである。

 

オウム真理教の精神史―ロマン主義・全体主義・原理主義

オウム真理教の精神史―ロマン主義・全体主義・原理主義

 

 

 

 

オウムとナチスと幸福の科学と. ~現代オカルトの根源~ 後編

前編では幸福の科学の教義と、その元を辿ってGLAに触れた(思ったより長くなってしまった)。
今日はGLAから更に宗教思想史を辿り、様々なカルト宗教やオカルト(子供の頃親しんだオカルトが実は宗教思想の方便だったことを知った時の衝撃よ)、危険な思想を産んだ神智学に辿り着きたいと思う。

 

今日の記事も長くなってしまったのでまとめを簡単に書いておく。

1. 幸福の科学の元を辿るとニューエイジを経て神智学に辿り着く
2. 神智学はヨーロッパに渡ってナチスを生み、日本に渡ってオウムを生んだ、極めて危険な思想である
(3. 自己啓発ももともと宗教)

 

昨日は幸福の科学の元となったGLAについて触れた。この教団の高次元霊との交信や、高級霊と低級霊(≒悪魔)といった思想の多くが幸福の科学に受け継がれている。

余談ではあるが、GLAと関わりを持った作家に平井和正氏がいる。『幻魔大戦』という作品を知っているだろうか。

 

幻魔大戦 [DVD]

 

漫画化や映画化もされた人気作なのだが、この作品の内容が「ある日超能力に目覚めた高校生が、世界を破滅させる幻魔と戦う」というものなのである。このように、GLA高級霊vs低級霊、「覚醒」した人間による超能力の発揮といった概念は、氏の作品を通じてサブカルチャーにも波及することとなる。

 

さて、GLAにも影響を受けた宗教が存在する。
その宗教は「叡智のアガシャ聖堂」と言う。高級霊との交信や、その霊の指導に従うユートピアの建設など、教義の共通点が指摘されている。この教団はアメリカを本拠地としており、当時存在したニューエイジ新宗教の一つである。ここでようやく「ニューエイジ」が出てきた。

 

ニューエイジ

 

少しサブカルチャーに詳しい人なら、「アメリカのヒッピーが大麻LSDをやりながら『おお、俺は神秘的な世界を垣間見たぜ!!』とかやってるアレ」と言ってもらえば分かるだろうか。何もドラッグをキメたいだけでやっていたわけではなく(いやそういう人が大半だったかもしれないが)、それには一応理由がある。

 

ニューエイジというのはその名の通り、「新しい時代」を語源とする。「新しい時代」とは西洋占星術における十二宮周期(2160年周期という長い周期である)の「水瓶座の時代」を指す。現代はその前の「魚座の時代」にあり、ゆくゆくはこの時代の物質的な制限・常識を超えた、新しい時代がやってくる。その時代の思想を先取りしているのがニューエイジャーだ、というわけである(何故魚かというと魚はキリスト教=現体制のシンボルだからである)。

 

水瓶座の時代」は英語で「アクエリアンエイジ」であり、実は超能力でバトルする同名カードゲームはこれに由来する。

 

ニューエイジという思想は極めて多様な概念を含むため簡潔にまとめるのは難しいが、概ね既存の体制(=魚座の時代)へのカウンターであり、一部を取り上げると下記のようなものである(現代オカルトの根源ではあまり触れられていないので、島薗進著「精神世界のゆくえ」を参考に要約)。

1. 意識変容・霊的覚醒による自己実現 : 自己をより高い次元へ近づける
2. 現代文明の行き詰まり : 既存の体制は行き詰まっているので新しい知を育てなければならない
3. 超能力・超古代文明は実在する
4. 指導霊の実在
5. 思考は現実化する:個人の意識は世界と繋がっている
6. 宇宙の霊的進化と意識の進化は繋がっている
7. 輪廻転生 : 魂は死後も存在し続ける
8. 宇宙人との接触:宇宙人は既に地球にやってきており、高度な知性を持っているものもいる

 

ヒッピーがLSDを摂取して幻覚に耽っていたのは1.の発想によるものであり、神秘的な世界に触れることで意識変容し、より高い次元へ行くことができるという発想である。
また、超能力や宇宙人などのオカルト成分も含まれているが、これは既存の体制へのカウンターとして考えれば理解できる。
つまり、「今の文明では解明できないことをニューエイジャーは知っており、既存の常識に支配されている人間より上等だ」というわけである。

 

この思想から、超能力の存在や霊との交信、宇宙の霊的進化(アクエリアンエイジへ)といったものが教義・教団化したのである。

 

ちなみに、5.の「思考は現実化する」は僕が十代の頃に耽溺した自己啓発本のタイトルそのままだが、自己啓発ニューソートというキリスト教思想が源流である。自己啓発も、そもそもは宗教思想の一形態なのだ(ニューソートを日本に持ち込んだのが生長の家谷口雅春)。

 

ここまで挙げてきたニューエイジの「宇宙は特定周期で霊的に進化し続けている」という思想や、「指導霊に従ったり霊的に覚醒することで自己を高められる」という思想は「神智学」という思想の影響を大きく受けたものである。

 

この「神智学」という思想は、オカルト成分が強いせいかあまり研究されていないが、この思想は世界各地に渡って危険思想やカルトを生み出した元凶と言えるものである。ここからは神智学の概要について簡単に触れる。

 

神智学はヘレナ・P・ブラヴァツキー(1831-1891)という人物によって生み出された。彼女はもともとロシアにいたのだが、結婚生活がうまくいかずに家を飛び出し、世界中を放浪した。この時触れた様々な宗教や神秘思想を折衷して作り上げた思想が、その後世界に思わぬ影響を与えていくこととなる。

彼女が生み出した神話は下記のようなものである(かなり簡略化している)。

 

宇宙論
宇宙は神から生み出された天使達によって作られた。神と天使達はビームを降り注がせることによって太陽系の惑星霊たちを創造した。神は太陽系に7つの周期を設定し、それに沿って宇宙を進化させようとする。

 

○人類論
宇宙論で述べた7周期のうち、第4周期で地球に霊が誕生した。7周期の中にはさらに7つの段階が存在し、人間は下記7段階の根幹人種を経て進化する。

1. 「不滅の聖地」に発生
2. ハイパーボリア人
3. レムリア人
4. アトランティス人(第三の目と超能力を持っていたという)
5. アーリア人(今はこの段階)
6. パーターラ人
7. 神人として聖地(1.の場所)に回帰

 

今の人類は第5段階にあり、アーリア人が支配種族である。
人類は北極近辺にある不滅の聖地に発生した。最初は霊的に進化していたが、文明が発達する度に物質的・動物的な欲望(科学や獣姦など)に支配されてしまい、文明は滅びてしまった。例えばレムリア人の中には獣姦(!)を行った者たちがおり、霊的な堕落が起こったためにレムリア大陸は沈没した。但し、滅亡の度に生き残った人類が存在し、次の段階の文明を作ってきた。今の世界でも「正しい」霊的進化をしている種族と「動物的な」物質的進化に取り込まれてしまっている種族が存在する。我々はこの世界において、霊的に進化していかなければならない。

 

読んでいて頭が痛くなってくるような内容だが、宇宙と人類の霊的進化、超古代文明・超能力といったオカルト、そして「霊的進化をしている種族は高尚であり、物質的進化を志向する種族は堕落している」という発想の元ネタがここに現れていることが分かる。

 

神智学はブラヴァツキー夫人の死後も発展を続け、後継者がオカルト好きだったことからさらにオカルト色を強める。
・秘密結社陰謀論:人類の霊的進化を妨げる悪の勢力「闇の同胞団」が存在する。
・人間を霊的に進化させようとする善の勢力「大聖同胞団」が存在する。この組織には9つの階級が存在し、歴史上の偉人たちはここに所属していたのだ。
・9つの階級の最上位に位置する霊格は金星からやってきた。
・ヨーガや瞑想によって超能力や霊能力を身につけることができる

...などなどである。

 

金星から地球を統べる霊格が地球にやってきたことになっていたり、9次元の階級が存在したりという部分は幸福の科学の教義にも見られ、オカルト色も後世の思想に引き継がれていることが分かる。

 

このような個人の妄想にしか思えないような内容の神智学がなぜ生まれ、広まったかというところには、実は生物学が関係している。進化論である。

 

「神が世界を創造した」という教義が生物学によって否定された際、宗教サイドがそれにどう対処するかという問題が発生した。神智学はその際の宗教サイドの反応の一つである。それまでの一神教的世界観を様々な宗教・思想を折衷した霊的世界観に置き換え、さらに進化論までも折衷したのだ。

 

さて、ここからは神智学の後世への影響についてまとめる。

アーリア人」、「高尚な種族とそうでない種族が存在する」...どこかで聞いたことがないだろうか。

 

途中をかなり省くが、「アーリア人が人類を支配する種族である」とした神智学はヨーロッパに渡ってユダヤ陰謀論と結びつき、アーリア人ゲルマン人の純血を守ろうとする思想が生まれた。この思想を持った集団に「トゥーレ協会」というものがあり、ディートリッヒ・エッカートやルドルフ・ヘスといった人物が会員になっていた。

 

この協会は最初は単なるオカルト結社だったが、次第に政治色を強め、1919年に「国家社会主義党」、そして1920年に「国家社会主義ドイツ労働者党」となる。既に分かっていた人もいるだろうが、「国家社会主義ドイツ労働者党」とはナチスのことである。

 

他の要因はあるにしろ、神智学の持つ選民主義や陰謀論ナチスの思想を産んでしまったのである。

 

さらに神智学は日本に入った後、ヨーガや密教修行による超能力開発の潮流を生む。この潮流に阿含宗という新宗教がある。密教修行を行うことにより超能力を身につけることができる(ヨーガ修行の部分で神智学が引用されている)というこの教団には、麻原彰晃こと松本智津夫が所属していた(これはオウム真理教マニアなら皆知っているネタだ)。オウム真理教の厳しい修行と超能力開発といった教義も、元を辿ると神智学にかなり影響を受けている(というか元ネタ)といえる。

 

そして僕がかつて信じていたオカルトも、神智学の影響下にある。ジョージ・アダムスキーという人物をご存知だろうか。「アダムスキー型UFO」なら知っている人も多いかもしれない。僕はアダムスキーについて「UFO好きな爺さん」くらいに思っていたのだが、彼の正体はそうではない。彼はもともと、神智学の影響を受けた「王立チベット教団」という団体を率いてコミューンで暮らす宗教思想家だったのだ。ところが神智学のネタにUFOネタを折衷した(何故折衷したかというとUFOが流行ったからだ)本がバカ売れしてしまい、UFOネタで生活していくことになったのだ。つまり彼の思想は神智学の1バリエーションだったわけである。

 

超古代文明ネタやマヤ暦ネタも同じような構造にあり、いずれも神智学を補強するネタが広まってしまった。
かつてハマったオカルトがカルト思想の補強ネタだったとは、インチキばらしから更に踏み込んだネタばらしをされた気分である。

 

幸福の科学の元ネタを辿る100年の旅がようやく終わった。たった100年そこそこでよくもここまで世界をかき混ぜてくれたものだと思う。それ程一部の人には神智学は魅力的であり、だからこそ危険なのである。

 

ここまでの記事は主に下記書籍を元に書いた。

大田俊寛著「現代オカルトの根源
島薗進著「精神世界のゆくえ
・レイチェル・ストーム著「ニューエイジの歴史と現在
東京キララ社編集部編「オウム真理教大辞典

 

 

 

 

精神世界のゆくえ―宗教・近代・霊性

精神世界のゆくえ―宗教・近代・霊性

 

 

 

ニューエイジの歴史と現在―地上の楽園を求めて (角川選書)

ニューエイジの歴史と現在―地上の楽園を求めて (角川選書)

 

 

 

オウム真理教大辞典

オウム真理教大辞典

 

 

 

オウムとナチスと幸福の科学と. ~現代オカルトの根源~ 前編

最近アイドル出家騒動幸福の科学が話題になっていたところに、たまたま幸福の科学オウム真理教の根源を探る書籍を読んでおり、読書会のテーマにもしていたので少し書いておく。

 

何もいきなり幸福の科学が生まれたわけではない。完全にオリジナルなものはないと言われるように、特に新宗教には影響を受けた相手というのが存在する。

 

これからオカルト話がかなり出てくるので僕のスタンスを書いておくと、オカルトネタは好きだけど、どんな嘘情報や誤解だったのかを調べるのが好きな
元オカルトマニアといったところである(なのでオカルトネタに関してはオカルト好きと同程度には知っている)。僕が小学生の頃にノストラダムスの大予言ブームというのがあり、オカルト少年だった僕は当然のように信じて「早く世界終わらないかなぁ」とめちゃくちゃ楽しみにしていたのだが、あっさりと外れてしまった。それからこれは何かおかしい、と思って調べたところ、これまで信じていたオカルトネタが実は誤解や嘘証言だったという情報がどんどん分かってきて「こんなインチキ情報を広めるわけにはいかん」と思うようになった次第である。オカルトのネタばらし入門としては、「パレンケの石棺」で検索してもらうと良い。

 

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パレンケの石棺.横に見て「超古代の宇宙人だ!」などとオカルト本に書かれたものだが、本当のところは...

 

前置きが長くなってしまったが、ここからは、現代オカルトの根源(大変素晴らしい本なので是非購入頂きたい)をベースに、ニューエイジ本で補助しながら幸福の科学の根源を辿る100年の旅に皆さんを招待しよう。

 

さて、幸福の科学という教団は、その知名度の割には教義の内容についてあまり知られていない。幸福の科学公式サイトにムーやアトランティスの話が書いてあるように、内容としてはかなりオカルト色が強いものとなっている。

 

簡略化して説明すると、この世界の根源は「大宇宙の根本仏」であり、そこから生まれた高次元霊から作り出されたのが今の宇宙である。この高次元霊のうち、地球を統べるのが「エル・カンターレ」であり、これが下生したのが大川隆法氏ということになっている。ところが、かつてある高次元霊が反乱を起こし、地球でサタンという名前で生まれて地獄界を作ってしまった。このため、この悪魔に取り込まれた霊を持つ人間は地獄界に堕してしまう傾向を持つこととなる。
宇宙は正しい高次元霊と悪しき悪魔との戦いの場であり、超古代文明が何度も生まれては滅びていった(超古代人には第三の目があり超能力を使えたという)。
このため今を生きる我々は堕落しないようにし、ユートピアを築かなければなければならない。そして世界は、大川隆法氏がいる日本を中心として発展するはずである。
というのが大筋である。

 

教団が他者を攻撃する際に悪魔呼ばわりしたり、右寄りなのは上記のロジックによるものだ。

 

かつてのオカルトブームを知る人であれば、「あれこれ子供の頃オカルト本とかMMRで読んだぞ...」と思うような内容であるが、とはいえ、神智学~ニューエイジの流れ
からすると特別突飛な内容でもない(神智学とニューエイジについては後述する)。
そう、この教義にもインスパイア元が存在するのだ。

 

総裁である大川隆法氏の出生名が中川隆であり、もともとは東大卒の商社マンだったことはネットでたびたびネタになるので知っている方も多いと思うが、彼が別の教団の強い影響を受けていたことはあまり知られていない。その教団は"GLA"と言い、新宗教について調べたことがある人なら一度は聞いたことがある教団である。
大川隆法氏はもともとこのGLAの著作に心酔しており、教団設立前からGLA設立者である高橋信次の霊と交信したり、初期の幸福の科学で「高橋信次UFOと宇宙」といった本を20冊近く刊行している。ここから分かる通り、初期の幸福の科学GLAの分派としての色を持っており、その教義にも共通点が多い。

 

GLAの教義においても高次元の霊的存在との交流による導きや、人間の堕落による超古代文明の滅亡やユートピアの建設が説かれており、幸福の科学のかなりの部分がこの教団の影響下にあることが見て取れる。

ではこの一見突飛な話の要素は、一体どこから来たのだろうか?

ここで出てくるのがニューエイジと神智学である。

 

後編ではニューエイジと神智学の概要と、それが後世に与えた影響について見ていこう。

 

 

 

 

精神世界のゆくえ―宗教・近代・霊性

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