読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

八幡神の足跡を探して ~英彦山・香春と八幡信仰~

最近神仏習合に興味を持っていることもあり、今回の帰省では八幡神について調べながら初詣をした。

 

f:id:caffelover:20170105145439j:plain

英彦山神宮 銅の鳥居 - 国指定重要文化財

 

八幡神とは宇佐神宮を総本社とする武神で、神社本庁の調査によれば「八幡神社」は2位の伊勢信仰を大きく引き離して最多であり、全国で篤く信仰されている。
古くは8世紀の隼人出兵から近代では第二次世界大戦でも奉じられたこの武神は、「南無八幡大菩薩」と書かれた幟が掲げられる通り、神仏習合色を強く持つ神であり、神道の神でありながら僧侶の姿で描かれる(僧形八幡)など実に興味深い。

 

f:id:caffelover:20170112231510j:plain

神でありながら僧侶の姿で表現される八幡神(僧形八幡) - wikipediaより

 

この八幡神について調べながら地元で初詣をしたのは、宇佐神宮が総本社である通り、この神が北部九州と深い繋がりを持つからである。

さて、今回参詣した神社について話をすると、今回は地元にほど近い香春神社に向かった。この神社は「辛国息長大姫大目命」を祀っており、「辛国」とは韓国のことを指す。つまり、この神様は渡来系の神様である。

 

f:id:caffelover:20170105170802j:plain

香春神社の解説

 

ところで、この神社がある香春町には「採銅所」という地名があり、かつて採掘した銅が宇佐神宮の鏡や奈良大仏建造に使われたという。

渡来系の神、鉱山技術とくれば連想されるのが渡来人である。この香春神社の神官は「秦氏」の系統であるという。「秦氏」とは渡来系の有力氏族であり、日本に養蚕や土木技術をもたらした。はじめ豊前に渡って来た後中央に進出し、各地に地名が残る。例えば京都の太秦秦氏が開拓した土地であり、そこで氏神として祀られているのが三柱鳥居で有名な木嶋神社である。
秦氏については渡来系、有力氏族、謎が多いときているために日ユ同祖論というトンデモ歴史論に使われてしまうことも多いのが面白いところである。古代イスラエル北王国の失われた10支族が南王国に先駆けてディアスポラし、その一部が秦氏として日本に渡来したというトンデモ歴史観なのだが証拠は何もない。更に八幡(ヤハタ)=ヤハウェなどという話もあり、あくまで話としては面白い。

 

香春と渡来人の関係について考えたところで、八幡神の天降りに関する言い伝えを引いてみる。「八幡宇佐宮御託宣集」によれば、「辛国の城に、始て八流の幡と天降って、吾は日本の神となれり」という文言がある。「辛国の城」とは渡来人の進出した土地であり、実はこれが香春ではないかという話があるのだ(大隅の辛国城という説が定説のようではあるが...)。

そして、八幡総本宮である宇佐神宮が渡来系の有力氏族である辛嶋氏(今も宇佐に辛島という地名が残る)と大和系の大神氏の勢力地の間に存在しており、大神氏が優位を確立させた後も辛嶋氏が宇佐神宮神職を務めていたことを考えると、豊前に渡来した渡来人が東に勢力を広げ、宇佐の地で大和の神と習合して誕生したのが八幡神ではないかと考えられるのである。

 

さらに、今回訪れた英彦山八幡神神仏習合に由縁のある場所である。

 

f:id:caffelover:20170105134356j:plain

英彦山神宮 奉幣殿 - 国指定重要文化財

 

宇佐神宮にはかつて巨大な神宮寺が存在していたのだが、この別当を務めた法蓮という僧侶は英彦山で修行しており、「彦山流記」には、法蓮が修行の末に如意宝珠(彦山権現がインドから持ち帰ったもの)を手に入れたところで八幡神にそれを取られてしまい、それを法蓮が咎めたところ、宇佐神宮の神宮寺別当として収まるよう請われたという伝承が残っている。

この宇佐神宮では仲秋祭という祭事が行われているが、これは元は仏教放生会(神仏分離令によって変更)であり、放生会とは生き物を野に放つことで慰霊を行のが目的の行事で(亀を放して功徳を詰む商売は落語にも出てくる)、八幡神とはなにかによれば、隼人出兵で多数の殺生を行った業から病の流行や天変地異が起こることを恐れた朝廷が法蓮主導で行わせたものという(宇佐神宮-神仏習合にも記載あり)。

そしてまた、英彦山神宮の中宮は宇佐神宮から来たものだという。

英彦山神宮に関しては神仏習合修験道の観点からも貴重な資料が存在するのでまた調査を行いたい(何故か資料館が冬季休館していた...初詣の時期にこそ開けていてもらいたいものだ)。

 

これまであまり意識していなかったが、八幡神神仏習合に関して、地元周辺の神社で思わぬ収穫をすることができた。香春~英彦山~宇佐と、古代豊前に渡ってきた渡来人と当時の最新テクノロジー、そして信仰のダイナミズムを感じることができる。

神社の謂れや地名を調べてみると、はるか昔の伝承が現在に生きていることが分かってなかなか興味深い。

 

神仏習合 (岩波新書)

神仏習合 (岩波新書)

 

 

  

八幡神とはなにか (角川ソフィア文庫)

八幡神とはなにか (角川ソフィア文庫)

 

 

神々の明治維新―神仏分離と廃仏毀釈 (岩波新書 黄版 103)

神々の明治維新―神仏分離と廃仏毀釈 (岩波新書 黄版 103)