Going Clear: 戦慄のサイエントロジー。

"Going Clear"という映画がたまたまAmazonで配信されていたので購入した。

 

 

この映画は大ヒットしたというわけではないが、宗教マニアにとっては割と有名な映画である。というのも、これはサイエントロジーに関するドキュメンタリーだからである。

 

サイエントロジー

 

映画通の人ならトム・クルーズジョン・トラボルタが所属している新宗教として、またサウスパークのファンならあのアニメ特有のやり方で取り上げてしまったためにシェフ役のアイザック・ヘイズが降板してしまった(彼はサイエントロジーの信者だった)原因として、あるいはネットの騒動に詳しい人なら、アノニマスを一躍有名にした"Operation Chanology"の敵対相手として記憶されていることだろう。

 

とはいえこの宗教について日本で取り上げられることはあまりなく、国内の新宗教に比べればほとんど知られていないのではないだろうか。新宗教マニアでも、何となくラエリアン・ムーブメントとごっちゃになる感覚がある程度の人が多いかもしれない。ところがこれが、なかなか興味深い教団なのである。

 

サイエントロジーの特徴は、細分化された段階を上っていく"レベル上げ"(ブリッジと呼ばれる)と、最高教義の秘匿にある。サイエントロジーには創始者であるL・ロン・ハバードの著作や講演を元にした教材が準備されており、それを学習していくことで教団内での位を高められるという寸法である。そしてレベルが上がる際にはお布施を払うという、ゲーミフィケーションも取り入れたなかなかうまい仕組みなのだ。高いレベルまで上がると人の心を読めたり物を動かせたりという超能力が使えるともされる...のだがそのレベルに達していた元信者の話を聞く限りは当然そんなことはない。

 

そして、ここからがこの教団の中核である。ブリッジの中で最高レベルに達すると、厳重に秘匿されている"隠し教義"を教えてもらえるという。その内容はレベルが低い人間が触れると発狂してしまうため、厳重に管理されているのだが、最高レベルに達していた複数の脱会者の証言を併せるに、それは次のような内容だ。

 

7500万年前、人類は1950年代のアメリカとほぼ同じ生活を歩んでいた...その世界での最大の社会問題は、人口過剰であった。

 

これを解決するため、銀河連合を統べる"ジヌー"は余分な人々を凍結させ、旅客機に載せて監獄惑星に運んだ。

 

そして人々を監獄惑星の火山に放り込んだ上、水爆を落として殺してしまった。実はこの監獄惑星というのは地球のことなのである。
死んだ人々の魂(セイタンと呼ばれる)は集められ、3D映画で色々な宗教の教えを刷り込まれた。

 

その後セイタンは野に放たれ、当時暮らしていた地球人に入り込んだ。

そして今、我々の体にもジヌーの魂が入っており、これが不安や神経症の原因になっている。

 

これを取り除くために、オーディティング(サイエントロジーで行われるカウンセリングのようなもの)をやらなければならないのだ。


という話である。

 

いきなり聞いた人なら「???」となるだろう。実際、大金をつぎ込みながらこの話を聞かされた元信者もあ然としたらしく、「奴らは一体何を言っているんだ!?頭がイカれてるかのテストかと思った。」と述べている。

 

ちなみにこの創生物語?は、"隠し教義"と言われながらネットに流出していたり、サウスパークで1分アニメにされちゃったりしているので、"隠し教義"とは既に言えなくなっている節がある。またWikipediaにはジヌーの項目があり、なかなか充実している。

 

これだけなら変わった教義の教団というだけで終わりだが、この映画ではこの後、教団の異常な行動に迫っていく。

 

トム・クルーズニコール・キッドマンが離婚する原因となった別れさせ作戦(ニコール・キッドマン父親はオーストラリアの心理学者であり、サイエントロジーに対して批判的だった)や、危険分子と判断した信者(何しろカウンセリングのメモが全部残ってるので個人的な相談事も全て教団に握られるのだ)を虐待する施設の存在、そしてトム・クルーズの広告塔としての顔など。

 

次第に明らかにされる教団の裏の顔を見るにつけ、戦慄する映画となっている。

 

さて、僕にとって興味深いのはその教義である。"銀河連合"、"宇宙人"などが出て来るあたりは何度か取り上げた神智学やそれを引き継いだUFOオカルトに近いところがあり、"Neo-Theosophy(ネオ神智学)"の項目に挙げられていたりするが、どうも直接的な繋がりが出て来ない。

 

このあたりの繋がりに関しては今後も調べるとするが、神智学をルーツとするUFOカルトは複数存在する。

 

その中で恐らく最も有名なのは"ヘブンズゲート"だろう。

 

「天の王国」の宇宙人が地球を常に見守っており、霊的に成長した個人は「天の王国」に帰還できる。
我々はそのために霊的成長を目指さなければならない、というのが大枠の教義だが、この教団が有名なのはその終末による。

 

1996年11月、ヘール・ボップ彗星の写真に写った謎の物体から、「天の王国から迎えがきた」と判断した彼らは、魂をUFOに載せるために集団自殺を試みた。39人の信者は遺体で発見され、その様子はカルトの集団自殺として報道された。

 

この教団を設立したのはアップルホワイトとネトルスという2人の人物だが、ネトルスは元神智学協会の会員だった。

 

神智学とカルト教団との関係については今後も調べていきたい。

 

僕はカルト教団にも興味を持っているが、一方で極左集団にも関心がある。

というのも、彼らをそうさせる理由が気になるからである。

 

人間が過激な行動に出るからには、それなりに理由がある。

 

一見不思議な行動や習慣も、その背後には人々の間で共有されている物語、教義、ロジックなどがあるはずなのだ。

 

僕はその物語というものに強く惹かれるのだ。勿論その原体験はオウム真理教である。

 

 

中核VS革マル(上) (講談社文庫)

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「カルト宗教」取材したらこうだった (宝島社新書)

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カルト村で生まれました。 (文春e-book)

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さよなら、カルト村。 思春期から村を出るまで

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