怪談話の作り方
前回、恐怖の生み出し方で説明した怖さの生み出し方ですが、ここで僕なりの応用例をご紹介したいと思います。
例:
この話のコアは、
謎の痩せ薬が、実はとんでもない寄生虫の卵だった
という筋で、そこにいじめ被害者親族の復讐劇を絡めてあります。
簡単に要素分解すると、
1. 痩せ薬が寄生虫の卵
2. 飲んですぐは普通に痩せてた
3. 実はアカネがいじめ殺していたヨシエちゃんはリサの妹で、復讐目的で飲ませた
4. 寄生虫は犬から取り出した
となります。
この話の創作は、ある2つの組み合わせから始まりました。
以前、星新一が「ショートショート創作のコツは、一見関連のない2つのものを結び付けることである」と書いているのを読んだことがあるのですが、怪談話の創作もこれに近いところがあります(特に僕の話の場合はショートショート的要素が強いので)。
怪談話の場合も、2つの要素を結び付けるところから発想が生まれることが多いのですが、何でも結びつければ良いというわけではなく、
安心要素(油断要素) + 不安要素(危険要素)
の2つを結び付けると恐怖になりやすいです。
今回の話の場合、
大したことないと思っている痩せ薬が安心要素で、寄生虫が不安要素となります。
この2つを結び付けることで、
1. 痩せ薬を飲んでいた → 実は寄生虫の卵だった
というメインの筋が出来上がります。
当然、これをそのまま提示してしまっては「ああ、それね」で終わってしまうため、うまくオチを隠す必要があります。そこで、
2. 飲んだ人物が突然痩せ始め、最初は問題なさそうだった
という部分を付け足しました。
これだけでも最低限の要素は満たしているのですが、恐怖とオチのすっきり感を増すためには、さらにもう一捻り必要だと考えました。特に、飲ませる相手は重要で、主人公だと読後感が悪いし、あまり良い人に飲ませると気分が悪くなります。そのため、ここでは悪人に飲んでもらうことにし、復讐劇にしやすいいじめっ子という設定にしました。
そこで、
3. 実はアカネがいじめ殺していたヨシエちゃんはリサの妹で、復讐目的で飲ませた
という筋が足されるわけです。すぐに復讐だと分かっても面白くないので、ヨシエ=吉江という簡単なトリックを追加し、すっきり感を増そうとしています。
最後に
4. ペットの犬から寄生虫を取り出した
というスパイスを足し、全体的な整合性を取って完成です。
このくらいの話で、構想に3日、実際の執筆には2時間程度かかっています。
今のところ順調に怖いを頂いているのですが、まだまだ幽霊ものの牙城は固いため、もう少し練った話も投稿したいと考えています。
創作者の方々の参考になると幸いです。